【息づく着物文化】日本の祝い行事、成人式を知る

このページでは日本ではお馴染みの行事、「成人式」について書きます。
参加する多くの成人が着物を着る、今の日本では数少ない行事の一つですね。

日本では誰もが経験するイベントですが、海外では珍しく見られるのかもしれません。

着物文化と合わせて、紹介していきます!

着物文化が息づく、「成人式」とは?

年度内(4月から翌3月)に成人になる人々(満18歳)に対して日本の各地域で行われる、祝福と激励のための行事です。
女性は着物を着る場合が多く、男性も紋付袴という伝統の正装を着る場合があります。

日本では当然のように行われる行事ですが、海外の方から見ると珍しいものかもしれません。
国の全体として行われる成人を祝う行事というのは、世界的に見ると稀だからです。

「毎年1月の第2月曜日」が成人の日とされ、各地方公共団体ごとに決められた場所で行われます。
特別な場所で行われることもあり、有名な例として、千葉県浦安市ではディズニーランドでの開催が恒例となっています。
地方公共団体によっては、成人の日以外に行われる場合もあります。

成人式のルーツ

日本には「冠婚葬祭」という言葉がありますが、成人式はその始めの「冠」に当たります。
それだけで、どれほど成人の儀式が大切にされてきたかがわかりますね。
 
日本には古くから成人の儀式がありました。
代表的なものを取り上げていきます。
 

男性の通過儀礼である【元服(げんぷく)】

奈良時代以降には、数え年で12から16歳の男子が「元服」という通過儀礼を行うようになりました。
髪を大人の髪型に結い、服装を改め、冠親から冠をいただきました。

武家では烏帽子親から烏帽子をつけられ、名を改めることが通常でした。
公家や平氏系の武家では厚化粧やお歯黒、引眉を行うこともありました。

室町時代からは民間にも広まり、年齢規定がなかったので5・6歳から20歳まで幅広く行われました。
江戸時代からは簡略化され、武家や庶民は烏帽子をつけずに、前髪をなくして月代(さかやき)を剃る程度に済ませるようになっていきました。
なお、江戸時代からは女性も元服と称して結婚時や18〜20歳くらいに髪型・服装を改め、厚化粧やお歯黒、引眉を行うこともありました。

公家の女性の儀式【裳着(もぎ)】

平安時代から安土桃山時代の公家の女性には、「裳着」という儀式がありました。
「裳(も)」という腰から下に巻きつける衣服を身につける儀式です。

12〜16歳くらいの、結婚が決まったときや決まりそうなときに行われました。
「裳着」を行うことで、結婚を許されたそうです。

同時に髪を結い上げる儀式も行われ、垂らした子供の髪型から大人の髪型に変わりました。

昔の庶民の成人儀式

「元服」や「裳着」は一般的に武家や公家などの上流階級のしきたりであり、庶民にはまた別の儀式がありました。
その内容は村や各地方によって違い、例えば、
「米俵を一人で運べるようになる」
「鹿などの野生動物を一人で狩りできるようになる」
などがあったようです。

そのうちでもっとも有名なのが「褌祝(ふんどしいわい/へこいわい)」というもので、多くの地域で行われていたようです。
「褌(ふんどし)」というのは、昔の日本男性が身につけていた帯状の下着です。
「褌祝」とはその名の通りふんどしが贈られる儀式で、13歳前後に親戚の女性から一人前になったと認められる証としていただます。

今のかたちの成人式はいつから?

今のかたちの成人式のはじまりは、1946年に埼玉県蕨市(わらびし)で行われた「青年祭」だといいます。
1946年は太平洋戦争終戦の翌年であり、世の中が混乱し不安に苛まれている中、蕨市の蕨町青年団が中心となって未来を担う若者を励まそうと始まったそうです。
「青年祭」の中で「成年式」という催しが行われました。

その催しが県や国から注目され、広まり、1949年には1月15日が「成人の日」と決められました。
1月15日に定められた理由としては、かつての通過儀礼だった元服を新年最初の満月の日に行う風習があったからです。
(ただしそれは旧暦の話なので、今の暦では1月15日が満月とは限りません)
その後の西暦2000年の祝日法改正で、3連休を増やすためのハッピーマンデー制度により、「成人の日」は1月の第2月曜日に変更になりました。

成人式はどんな式?

各地方公共団体ごとに大勢が参加可能なそれぞれの場所に集まり、講演会や記念品が贈られたりします。
通常は市長などが壇上で話し、自治体によってはそれぞれ地方出身の有名人がゲスト参加したり、メッセージを送ることもあります。

また、式当日は学校が違うなどで会えなかった友人と久しぶりに顔を合わせることも多く、同窓会のようになります。
それぞれの地域で二次会が行われ、その地域の学校の先生が参加することもあります。
二次会の場所はパーティー会場が設定されていたり、ラフな環境である飲み屋であったりします。

どんな服装を着る?

成人式といえば、まず服装が注目されるでしょう。

女性は「振袖(ふりそで)」という着物を着る人が圧倒的に多く、その割合は約9割とも言われています。
「振袖(ふりそで)」とは、未婚の女性が着る着物の中で最も格式高いとされていて、他の着物に比べて袖が長いのが特徴です。
華やかで若々しい柄が多く、今では人生の晴れ舞台の衣装として定着しました。

購入した振袖を何代か引き継いで着る家もありますが、今はレンタル衣装を着る人が増えています。
着付けやヘアメイクを含めて美容院を予約する人も多く、毎年成人の日は朝早くから美容院が大忙しというのは年明けの風物詩となっています。
振袖は人気の柄のデザインが早くに決まってしまう場合も多く、約2〜3年前から予約するなどの準備を始めるのが通常のようです。

男性はスーツか紋付袴での参加が一般的です。
女性と同じく、男性も紋付袴はレンタルが増えています。

現在の成人式

モラルの低下

着物姿の新成人が式中に大声ではしゃいで式自体を妨害したり、アルコール飲料で酔って街中で暴れ回ったりする様子が毎年報道されていました。
中には公務執行妨害で逮捕された事件も発生しており、成人としての決意を新たにする場であるはずが、若者のモラルの低下が露見する現象が起きています。

成人年齢引き下げ

2022年の民法改正により、成人年齢が20歳から18歳へと引き下げられました。
引き下げられた当初は参加対象者の年齢を何歳にするのかなどの問題があったようですが、2024年からは18歳の成人に統一されたようです。
18歳ではアルコール飲料を飲むことができませんので、暴れたりする行動は起きづらいのかもしれませんね。

成人式について思うこと

僕は今30代になりましたが、自分の成人式のことはよく覚えています。
僕が参加した地元での式は暴れる新成人がいるわけでもなく、特別な場所で行われたり、有名なゲストの方が来たりということもありませんでした。
それでも、同級生と久々に会ったこと、新成人として特別な式典を行ったことは鮮明に覚えています。

当時は単に同窓会というような意味合いでしかなかったと思いますが、十数年経った今考えると日本文化を継承した式に参加できたこととして、自分の中の価値がだんだんと大きくなっているように思います。
多くの人が着物を着る機会がこの成人式くらいというのも悲しいことではありますが、この文化がなくなって欲しくない、と思います。

僕としても、大切にしていきたい日本文化の行事の一つですね。

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