【古事記とは?】日本最古の歴史書の内容をわかりやすく解説! 

このページでは、
「歴史書『古事記』とは?」
というテーマで、『古事記(こじき)』という日本の歴史書の内容をわかりやすく解説します。

まず、『古事記』とはどのような書物なのでしょうか?

古事記とは?

どのような歴史書?

『古事記』とは、現存する日本最古の歴史書です。
同時期に書かれた歴史書としては『日本書紀』があり、『日本書紀』が国の正史とされているのに対して、『古事記』歴史物語の形を取っています。
朝廷に伝わっていた『帝紀』と『旧辞』という歴史書をまとめたものです。
(『帝紀(ていき)』とは天皇家の系譜が記録されたもの、『旧辞(きゅうじ)』とは神話や伝説などの口承や古いできごとをまとめたもの、と言われています。それぞれ数種類あったようです)
『古事記』以前からあった『帝紀』と『旧辞』などの書物で残っているものはないですが、『古事記』は現存するものがあるということですね。

『古事記』『日本書紀』の違いについては↓
【記紀を知る】『古事記』と『日本書紀』とは?違いをわかりやすく解説!

いつ、作られた?

和銅5年(712年)に完成しました。
第40代天皇である天武天皇の命令で作成が始まり、天皇崩御で一旦作業は中断しました。
しかし三代のちの元明天皇が慶雲4年(707年)に即位し、改めて命令が出て、平城京完成を祝う文化事業の一つとして出来上がりました。

なぜ、作られた?

第40代天皇である天武天皇の治世下、近くの中国(大陸)では軍事大国である唐(とう)が発展し、日本は国家統一に迫られていました。
そのため、朝廷では国家事業の一環として天武天皇の命令で2種類の書物が作成され始めたといいます。
2種類とは「国内向け」「海外向け」の書物で、そのうちの「国内向け」皇室の正統性を示すために作られたのが『古事記』です。

なお、「国内向け」と「海外向け」という特徴上、日本書紀』が純粋に漢文で書かれているのに対して『古事記』は古代日本人が用いた「やまと言葉」と漢文を組み合わせた独特な言葉で書かれています。
詳しくは下記ページを参照↓

著者は?

著者(または編者)は太安万侶(おおのやすまろ)という貴族です。
朝廷に伝わっていた『帝紀』と『旧辞』は天武天皇の命令で稗田阿礼(ひえだのあれ)という舎人(とねり。天皇のそばに仕える者)が暗誦し、三代のちの元明天皇の指示で太安万侶がそれを筆録したと言われています。
『古事記』は記憶力の良い稗田阿礼と、文筆に優れた太安万侶という二人の学者的才人が共同で作り上げたものだと言えるかもしれません。
太安万侶はのちに『日本書紀』の編纂にも参加しました。

◎古事記の内容

『古事記』って一体どんな内容でしょう?
これからは具体的な内容についてです。
このサイトでは、『古事記』の内容をわかりやすくまとめ、長い歴史物語を読まなくても大事がところがわかることを目指しています。

ここで『古事記』の内容のほとんどがわかります!

古事記の内容「まとめ」

最初に、『古事記』の内容まとめから書きます。

『古事記』の内容を無理やり一言でいうなら、「日本という島国の誕生から始まり、天照大御神(アマテラスオオミカミ)という女神が最高神となって、その孫が日本を統治するために天上界から地上に降り、さらに子孫が建国して天皇となり、天皇家が続いていくエピソード」です。
神々のエピソードから始まり、最高神の子孫である初代の神武天皇が出てくるあたりから人間の物語となって、それが第33代推古天皇まで続いていくのです。
(内容が第33代推古天皇までなのは、参考にした『帝紀(ていき)』がそこまでの記録だったからだと考えられます)

物語中には「天岩戸(あめのいわと)神話」や「スサノオノミコトのヤマタノオロチ退治」「ヤマトタケルノミコトの草薙剣伝説」などの数々の有名な話があり、基本的には一本の歴史物語になっています。
話の中には歴史事実もあればあまりにも現実離れした神話物語もたくさんあり、実は内容に難解さはなくて親しみやすい話ばかりです。
「天皇の正統性を示す」という目的はありますが、文章の中には古代日本人の考えなどがひしひしと感じられる部分もあり、読みものとして充分に面白いのです。

古事記の目次

ここでは『古事記』の「目次」を紹介します。
この「目次」を眺めれば、古事記にはどのような内容が書かれているかがよくわかると思います。

『古事記』「上巻」「中巻」「下巻」全3巻です。
エピソードは大きなタイトルとしていくつか分かれているので、そのなかの大まかな内容は箇条書きでまとめました。

序文
・太安万侶による序文

上巻

①天地の始まり
・造化三神(ぞうかさんしん)の出現
・宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコジノカミ)と天常立神(アメノトコタチノカミ)
・神世七代(かみよななよ)

②伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)
・伊邪那岐命と伊邪那美命の国生み
・神生みと火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)の誕生、伊邪那美命の死
・伊邪那岐命の黄泉国(よみのくに)訪問
・伊邪那岐命の禊祓い(みそぎばらい)
・三貴子(みはしらのとうときこ。天照大御神・須佐之男命・月読命)の誕生

③天照大御神(アマテラスオオミカミ)と須佐之男命(スサノオノミコト)
・須佐之男命、高天原(たかまがはら)に向かう
・天照大御神と須佐之男命の誓約(うけい)
・高天原での須佐之男命の乱暴
・天の岩屋伝説
・須佐之男命の追放
・八俣遠呂智(ヤマタノオロチ)退治
・須佐之男命の結婚

④大国主神(オオクニヌシノカミ)の国作り
・稲羽の白兎伝説
・大国主神の試練
・大国主神の国作りとその子孫

⑤大国主神の国譲り
・高天原から天若日子(アメノワカヒコ)、地上へ
・建御雷神(タケミカヅチノカミ)の派遣
・建御雷神と建御名方神(タケミナカタノカミ)の力競べ
・国譲りと出雲大社の始まり

⑥邇邇芸命(ニニギノミコト)の天孫降臨
・天孫(てんそん。天照大御神の孫)邇邇芸命の天降り
・猿田毗古神(サルタビコノカミ)と天宇受売命(アメノウズメノミコト)の結婚

⑦海佐知毘古(ウミサチビコ)と山佐知毘古(ヤマサチビコ)
・失くした釣針
・山佐知毘古、海神の宮殿へ
・海佐知毘古の屈服
・鵜葺草葺不合命(ウガヤフキアエズノミコト)誕生と禁忌破り

中巻

①神武東征と欠史八代
・神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコノミコト。神武天皇)の東征開始
・熊野から大和へ、八咫烏(ヤタガラス)の導き
・大和平定
・登美毘古(トミビコ)との決戦と、橿原(かしはら)での神武天皇即位(日本建国)
・欠史八代

②崇神天皇と垂仁天皇
・第10代 崇神(スジン)天皇の治世と三輪山の大物主神
・建波邇夜須毘古命(タケハヤニヤスビノミコト)の反乱
・垂仁天皇の即位と沙本毘古王(サホビコノミコ)の反乱
・物言わぬ王子、本牟智和気命(ほむちわけのみこと)と出雲大社参拝

③倭建命(ヤマトタケルノミコト)の遠征
・大碓命(オオウスノミコト)と美濃の二人の娘の偽り
・小碓命(オウスノミコト。のちの倭建命)の兄(大碓命)成敗と西征、倭建命の誕生
・倭建命の出雲攻め
・東国遠征と草薙剣伝説、弟橘比売命(オトタチバナノヒメ)の死
・美夜受比売(ミヤズヒメ)との恋と、倭建命の最期
・白鳥伝説

④神功皇后の活躍
・神功皇后の三韓征伐
・香坂王(カゴサカノミコ)と忍熊王(オシクマノミコ)の反乱
・品陀和気命(ホムダワケノミコト。のちの応神天皇)と気比大神(ケヒノオオカミ)

⑤応神天皇の時代
・第15代 応神天皇と矢河枝比売(ヤカワエヒメ)
・髪長比売(カミナガヒメ)と大雀命(オオサザキノミコト。のちの仁徳天皇)
・百済人の来朝
・大山守命(オオヤマモリノミコト)の謀反
・天之日矛(アメノヒボコ)の渡来
・秋の神と春の神の物語

下巻

①仁徳天皇と石之日売命(イワノヒメノミコト)
・第16代 仁徳天皇の聖帝(ひじりのみかど)伝説
・吉備の黒日売(クロヒメ)
・石之日売命の旅
・八田若郎女(ヤタノワキイラツメ)と八田部
・速総別王(ハヤブサワケノミコ)と女鳥女王(メドリノヒメミコ)
・建内宿禰(タケウチノスクネ)の長寿

②仁徳天皇の子供達
・墨江中王(スミエノナカツミコ)の反乱
・第18代 反正(ハンゼイ)天皇の活躍
・弟19代 允恭(インギョウ)天皇と盟神探湯(くかたち)

③木梨之軽王(キナシノカルノミコ)と安康天皇
・木梨之軽王の失脚
・第20代 安康天皇の即位と目弱王(マヨワノミコ)の反乱
・葛城都夫良(カツラギノツブラ)の滅亡
・市辺之押歯王(イチノベノオシハノミコ)の最期

④雄略天皇の時代
・第21代 雄略天皇と皇后若日下王(ワカクサカノミコ)
・待ち続けた引田部赤猪子(ヒケタベノアカイコ)
・吉野の童女(おとめ)
・葛城の一言主神(ヒトコトヌシノカミ)
・三重の采女の和歌

⑤顕宗天皇(ケンゾウテンノウ)と仁賢天皇
・後継者探しと二人の王子の発見
・平群志毘(ヘグリノシノビ)の失脚
・第23代 顕宗天皇と老女置目(オキメ)
・顕宗天皇の復讐
・第24代 仁賢天皇から第28代 宣化天皇まで
・第29代 欽明天皇から第33代 推古天皇まで

『古事記』の内容について(私見)

『古事記』に触れるときの理由は色々あると思います。
「教養のため」「日本の神々に興味を持ったから」「神話から始まる歴史書とはどんなものかを知るため」「物語として楽しむため」
でも、昔の書物って難しそうだし、いつかは知りたいと思っていても、手を出しにくいですよね。
だから、このページを作りました。

『古事記』の全訳は色々な方が出していてその訳文の文章にもよるとは思いますが、実際に読んでみると内容的には全然難しくありません。
むしろ物語としてはわかりやすく、とてもシンプルな内容が多い感じです。
「神々でもこんな幼稚なことするの?」っていうような信じられない展開があったり、現代の小説などにも見られないような荒唐無稽な印象の出来事が書かれていたり、そういう意味で戸惑ってしまう内容はあるかもしれません。

戸惑いが生まれる部分は古代人と現代人の価値観の違いが大きいのではと思います。
例えば英雄と言われるヤマトタケルノミコトの行動は今の価値観では、超一級の犯罪者に思えるものだったり、卑怯だと捉えられるものだったりもするかもしれません。
それは、古代人あるいは当時の朝廷の、英雄への捉え方が違うからだと思います。

あるいは、荒唐無稽と思えるような内容の中に、とても深い日本的教訓が書かれている部分も多々あります。
『古事記』の原文はとてもシンプルなものらしく、ゆえに古代人の常識となっている部分は省かれていたり、逆にわかりづらいみたいです。
でも、各訳文を読み比べてみてその内容に深い教訓を読み取ったり、深読みして学ぶことも無限にできると思います。

いずれにしてもとても面白いものですし、さらには日本の正式な歴史書とされていて、最重要な書物であることには変わりありません。
このページで『古事記』のことを少しでもわかったという方がいらっしゃったり、『古事記』あるいは「日本の歴史」にさらに興味を持ってもらえる方がいらっしゃれば、何よりも嬉しいです。

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